ゆうじんの部屋 #28

「行政経営の時代」
徳山日出男
日経BP社 1,905円+税  ISBN4-8222-2037-0 2004/9
福井市立図書館所蔵
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著者の役職、国土交通省道路局企画課道路事業調整官は、道路関係予算すべての配分をとりしきるポストであり、 日本の道路行政の実務のすべてを握っている人と言っても過言ではない。行政の評価、ユーザー主義など、行政のあり方が前半、 道路種別別に行われてきた道路行政が、目標別に変わってきている といった話が後半。 日本の道路行政の向かっている方向がよくわかる本であり、道路行政の外の人にはおすすめである。 個人として書いている本ではあるが、やはり半分行政本であり、 現在の道路行政の方向性に批判的な記述は見当たらない。 ただ、目標達成型行政に変わると、道路行政は総合交通政策を取らざるを得ないはずで あるから、具体の現場の道路行政が目標管理型になっていず、 道路を作ることに目的を見出しているようであれば、 それを批判する武器として利用価値の高い本であろう。

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ゆうじんの部屋 #27

「危ない間取り」
横山彰人
新潮社¥1300+税  ISBN4-10-468801-0  2004/6
福井市立図書館所蔵
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3LDKなど、日本の住宅行政は最低限の量的供給に汲々とし、質を忘れていた。リビングに顔を出さずに廊下から入れる子供部屋は非行の温床。 以上がこの本の要約である。上の二行は言い古された言葉で、今は民・都市機構問わずバリアフリーや広いリビングなど多様化を図っている。もちろんそのコストは購入者負担である。著者はその質の向上に公費を投入せよと言うのだろうか。そこは明確に訴えていないところが物足りない。 不特定多数が使うまちづくりでさえ公費負担が難しくなっている今、低所得者の生活の質の向上を文化、教育、住居、食費のどこに重点化するのか。教育のように、他人に迷惑をかけず、収入増に つながるものはまだしも、今やその他の部分は個人に任されるべきであろう。 この本をただ読んでも面白くない。でも、まちづくりと重ね合わせて読んでみよう。ライフスタイルを考えないまちづくりは、幸せを生まないのである。

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ゆうじんの部屋 #26

「地下鉄東西線計画25の欠陥」
江刺洋司 東北大学名誉教授著
本の森 1,500円+税  ISBN4-938965-58-5 C0036
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ROBAの会の皆様には、仙台地下鉄東西線を路面電車で整備すべきとのHP等をご覧になった方が多いかと思います。この本は、全く逆に、金がかかっても将来のためにもっと深く、地下街を備えた立派な地下鉄にせよと主張する。本の前半は、エネルギー問題、環境問題に割かれ、著者の学識が感じられるが、利子(割引率)を用いた費用便益分析を否定するところから共感が持てなくなってしまう。 先行き不安な世の中では、都市がどう変わるかを予測することは難しく、それを克服するのが割引率である。資源欠乏、少子化時代の都市が、筆者の思うようなシナリオで変わっていく保証はどこにもない。筆者の優れた見識が都市計画家との議論を経て研ぎ澄まされたように思えないのが残念である。

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ゆうじんの部屋 #25

「クルマ社会のリ・デザイン」 近未来モビリティへの提言
日本デザイン機構編      鹿島出版会
2200円+税  ISBN:4-306-04439-4  2004/7/30
福井市立図書館所蔵
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バスマップサミットが福井で開かれたが、クルマ向けののりのりマップをデザインするための本が出版されました。というのは冗談で「糊」でも「乗り」でもなくクルマ社会の リ・デザインで、デザインし直すということです。クルマと地球環境、まちの賑わい、高齢化、ITS・・・・・さまざまな社会潮流の中で、過度にクルマに依存した都市を見直そうという趣旨で、50余名の提案が集められている。 いずれもクルマ社会を語るにふさわしい有名人である。買って損はないでしょう。著者はみんな物がわかった人だから、公共交通やカーシェアリングの社会的価値を認めつつクルマ所有の喜びも否定していない。結局一番大変なのは、クルマ抑制型政策の合意形成する人である。

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ゆうじんの部屋 #24

「市民のための道路学」
上岡直見著  緑風出版  
2400円+税  ISBN:4-8461-0409-5  2004/7
福井市立図書館所蔵
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私は上岡直見さんのファンであるから、書評を書くのに不適なのかもしれない。道路中心の土木政策を変えたいと思いながら、人を説得する武器を持ち得ない人に、格好の武器を与え続けてきた上岡さんが、またやってくれました。 交通問題に対しては、仮定の置きかたによって、鉄道有利自動車有利いろいろな数字が作れてしまうことを自ら解きながら鉄道有利の数字を作って例示してくれる親切さ、大胆さ。 武器を作っていながら、敵の立場の人に対しても同情を忘れないやさしさ。今回は本の内容にはあまり触れませんでしたが、ROBAの会員の皆様には絶対おすすめです。 私の本の引用もあります。道路の資金制度のことは他にも書いている人がたくさんいるので、本当は無料駐車場のことを引用してほしかったのだけれども。

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ゆうじんの部屋 #23

「都市計画」
(社団法人日本都市計画学会機関紙)
25Apr.2004 Vol.53/No.2 ISSN 0495-9280248
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日本都市計画の情報発信。「日本の都市計画は世界にどう見られているのか」、「日本の都市計画が世界にアピールできる点は何か」これは今月の「都市計画」のテーマである。
よく規制の緩さが批判される日本の都市計画であるが、多用途の混在した魅力ある市街地、鉄道や道路の急速な整備で欧米をはるかに凌ぐ速度での都市化を、目立ったスラムの形成を見ずに達成できたことは評価されるべきであるが、更なる魅力作りには課題が多い。短い文章ではあたりまえの結論になるが、多方面から外国人の言葉を借りて書かれるとなるほどと納得してしまうから不思議である。
上に書いたようなことをぼんやりと思っていたが、それを確信できる客観的な意見が欲しいという人におすすめの書である。

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ゆうじんの部屋 #22

「土木学会論文集Ⅳ」
土木学会  2004-4 NO.758 Ⅳ-63
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土木学会論文集の中に、「米国のスマート型成長政策の動向:社会資本と地域開発の統合的視点から」(谷口守、Robert CERVERO)という論文がある。路面電車ファンの殆どは、コンパクトシティを好み、「歩いて暮らせるまちづくり」を志向するが、人口減少時代で、自動車保有者が多数派の国で実現可能かどうか。この論文は、その根本問題を考える理論的枠組みを提案しようとしている。
本来政治的な問題である、コンパクトシティをめざせるかどうかを理論で解き明かそうとする取り組みは挑戦的である。私自身は、自動車利用者に社会的費用を払わす経済的規制のみが最適な都市交通政策と考えているが、それが実現できないとき、セカンドベストの政策を行う必要があり、市民的議論の重要性を改めて認識させる論文であった。

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ゆうじんの部屋 #21

「都市をつくった巨匠たち」 -シティプランナーの横顔-
新谷洋二・越澤明 監修   都市みらい推進機構 編
ぎょうせい  3333円+税  ISBN4-324-07095-4  2004/3
福井市立図書館・みどり図書館所蔵
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都市計画が専門の私でも、都市計画家と建築家のどちらを多く知っているかと問われれば、建築家と答えざるを得ないほど、個人の業績として語られる都市計画は少ない。また、道路、公園、下水道等の配置や建物の制限をいくら完璧に設計したところで、そこに住む人、経済情勢等に合っていなければいい町はできない。
この本にでてくる内外の都市計画家は、デザイナーではなく、その時代の思想家であったり法律家であったり、平易な言葉で言うと経営センスのある人であろう。それは今の都市でも同じであるが、各時代に活躍した都市計画家たちが、その時代の要請にどう応えたか、今一度問い直して、今の時代をみつめ直してみよう。
この本は、それを通じた歴史法則や空間設計のあり方の教科書ではない。そのため、少し退屈であるが、過去の事例から自らの都市計画論を構築する意欲のある人にはおすすめである。

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ゆうじんの部屋 #20

「道路行政失敗の本質<官僚不作為>は何をもたらしたか」
杉田聡著
平凡社新書 760円
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人間の生命の尊厳価値は無限大、経済的価値は手段にすぎない。こう明確に言い切ると体制派経済学者の現状維持的政策論に明快に対抗した論陣を張ることができる。宇沢弘文、杉田聡氏の本はわかりやすく、杉田氏の交通事故を生むクルマ社会への痛烈な批判はこの本の後半でも繰り返されるが、前半には公務員の天下り攻撃が加わった。
確かに、日本の政策はすべて問題が起きた時、GNP が増える方向の解決策に偏っている。それは天下りに少しは原因があるであろう。
でも、公務員の政界転出まで禁止するのはいかがなものか。日本の交通問題解決の知恵の多くは公務員の中にあると思うのだが。

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ゆうじんの部屋 #19

「道路の権力」
猪瀬直樹著
文藝春秋 1600円+税  2003/11
福井市立図書館・みどり図書館所蔵
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公務員、公団職員といった、法律と予算で身分が決まる人々は、何に労力をかけるか。当然法律と予算が、自分に有利に決まるように政策企画をすることに労力を使う。情報公開法は、国のために働く職員と、自分のために働く職員を明らかにすることを容易にした。しかし、一般の公務員に至るまで、資料ベースで行為の可否を解明するのは非常に骨の折れる作業である。
猪瀬氏は、そうした官僚の体質をよく理解した上で、ポイントをついた追求を得意としている。行政改革のコツとしてはおもしろい本なのであるが、高速道路と一般道路と他の交通機関の分担のあるべき姿、道路交通の水準をどうすべきか等について、全く議論されないまま、組織退治だけが行われているのは残念である。

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